障害年金の基本と受給要件
はじめに
「ある日突然、新たに障害を抱え、人生の岐路に立たされてしまった」
「長年慢性疾患を抱えている」
「生まれつきなど、20歳になる前からの病気やケガがある」
障害年金は、病気やケガによって障害を持つことになり、日常生活や仕事が難しくなった人たちを支援するための制度です。これは日本の社会保障制度の中でも重要な柱なのですが、多くの人がその存在や受給条件を知りません。また、主治医から積極的に受給を勧められるものでもないため、受給資格を持ちながらも申請自体行っていなかったり、受給開始が遅れるケースが散見されます。
日本における3種類の「年金」
通常、年金というと、老後の生活を支える「老齢年金」がよく知られています。しかし、若い方が病気や事故で障害を持つようになったり、家庭の主たる収入者が亡くなったりした時には、「障害年金」や「遺族年金」がもらえます。これらは、人生で予想外の事態が発生した場合に大切な支えとなるものです。
障害年金を受給するためには
障害年金を受給するための条件を簡単に説明すると、「国で定める一定の障害があり、かつその状態が一定期間にわたる場合」のことをいいます。
「障害」とは、目や耳が不自由なことや身体が動かしにくいことだけでなく、がんや糖尿病、心臓病、呼吸器の病気など、長期的な治療が必要な内臓疾患や、統合失調症のような心の病気も含みます。これらは、仕事や日常生活に重大な制約を与えている状態を指します。
障害年金の受給者は外見から判断しにくいため、「こんなに若くて健康そうに見えるのに、どうして?」と疑問に思われることも少なくありません。
障害者手帳がなければ障害年金はもらえない?
よく誤解されがちですが、そんなことはありません。障害者手帳(身体障害者手帳、療育手帳、精神障害者保健福祉手帳の3種類の手帳の総称)を持っていることは、障害年金を受給するための必須要件ではないからです。
障害者手帳を持っていなくても、前述の状態にある場合は障害年金を受ける資格がありますし、障害者手帳を持っていても、障害年金を受給できない場合もあります。
障害年金を受給するためには、国で定める一定の障害状態であることが必要であるとお分かりいただけたと思います。
ここからは、もしご自身が前述の障害状態になった場合、いざ障害年金を受給するためには他にどんな条件をクリアしなければならないのか、おおかまに確認していきましょう。
障害年金を受給するための最重要条件トップ3
障害年金を受給するためには、クリアしなければならない様々な要件がありますが、その中でも最低限満たす必要のあるものを3つ挙げていきます。
1.初診日の要件
「初診日」とは、病気やケガのために医師や歯科医師に初めて診察してもらった日のことをいいます。国民年金、厚生年金、共済年金に加入している間に「初診日」があることを証明する必要があります。
中には健康診断で「要精密」と通知を受け、その後治療目的で病院にかかるケースがあります。その場合における「初診日」はいつになるかというと、原則としては、健康診断を受けた日ではなく、その後初めて医師の診察を受けた日が「初診日」になります。
幼少期からの病気やケガのために障害になった場合や、60歳から64歳の間に初診日がある場合は、「障害基礎年金」の対象になります。
この「初診日」がいつであるのかによって、どの年金制度(障害基礎年金や障害厚生年金)が適用されるかが決まってきます。簡単に説明すると、国民年金(障害基礎年金)では1級と2級のみですが、厚生年金保険(障害厚生年金)であれば3級まであります。もし審査の結果、3級程度の障害状態であると判断された場合、国民年金のみであれば1円も受給できませんが、もし「初診日」が厚生年金保険の被保険者期間中にあることが証明できれば、3級の障害厚生年金が受給できることになります。(障害厚生年金3級には最低保証があり、令和5年度においては月額約5万円弱程度)
このように、障害年金を申請するときには「初診日」を正確に知ることが非常に重要です。
2.保険料納付要件
障害年金を受け取るためには、保険料をちゃんと払っているかどうかがとても重要です。会社員の方は、お給料から自動的に保険料が天引きされていることがほとんどですが、自営業の方や学生の場合は自分で国民年金保険料を納付する必要があります。もし病気やケガで重い障害になっても、この保険料をきちんと払っていないと障害年金はもらえません。
具体的には、「初診日」の前日時点での保険料納付状況が審査されます。
初診日のある月の前々月までの期間において、
①3分の2以上が納付済期間、免除期間または猶予期間であること(例. 学生や若年者向けの特別な保険料支払い猶予制度があります。)
②直近1年間に未納期間がないこと(令和8年3月31日までの特例)
要するに、初診日までの間に、保険料を滞納していないことが大切です。実際に払った期間だけでなく、免除された期間も含まれます。
また、20歳前からの病気やケガで障害になった場合は、この保険料納付要件は関係ありません。
学生の場合、保険料を払い忘れることが非常に多いです。学生だからと保険料を滞納していると、もし卒業後すぐに大きな事故に遭って重い障害を負っても、条件を満たせずに年金がもらえなくなることがあります。
20歳時点で学生であるために収入がなかったり収入があっても少ない方は、「学生納付特例制度」を忘れずに申請しましょう。
万が一、特例期間中に病気やケガによって障害を抱えた場合、学生納付特例の申請をきちんと行っている方であれば、障害の度合いに応じて障害基礎年金が受給できます。20歳になったら、住民票のある市区町村の窓口に申請書を提出しましょう。
通常、市区町村などの自治体から国民年金に関する書類が送られてきます。その中には、「学生納付特例制度」の申請書が入っていることが多いので、忘れずに提出しましょう。
3.障害認定日要件
障害年金をもらえるかどうかは、「障害認定日」という特定の日に、どれだけ障害が重いかで決まります。
「障害認定日」は、前述の「初診日」から1年6ヶ月経った日、またはそれ以内であっても症状が固定した日を指します。ただし例外もありますので、その代表例を次に記載します。
・人工透析・・・透析を始めてから3ヶ月経った日
・心臓ペースメーカーや人工弁・・・装着した日
・人工肛門・・・造設した日から6ヶ月経った日
上記のように、1年6ヶ月よりも短い期間で「障害認定日」を迎える傷病もあります。
審査の結果、障害認定日に一定の障害があると無事認められた場合に、翌月分から年金が支給されます。これを「認定日請求」と言い、申請が遅れた場合でも、条件を満たしていれば最大5年遡って支給されます。
また、「障害認定日」時点では症状が軽いために受給できず、65歳の誕生日の前々日までに症状が悪化して障害状態に該当した場合は年金を受け取ることができます。これを「事後重症請求」といいます。認められた場合、請求月の翌月分から年金が受け取れます。
「認定日請求」も「事後重症請求」も、請求が遅れてしまうと受給額が減ったり受給権を失ってしまうことがあるため、早め早めの申請手続きが必要です。
おわりに
「知らなかったからもらえなかった」という請求漏れをしないためにも、病気やケガによって障害を持つことになったり、病気のために労働できない期間が長引く場合には、早めに障害年金の申請を検討しましょう。
市役所の年金課やお近くの年金事務所、障害年金の請求代理を専門としている社会保険労務士などに相談すると良いでしょう。
まつもと社会保険労務士事務所は、障害年金の申請に力をいれている事務所です!お問い合わせお待ちしております。
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